レジ袋有料義務化と独禁法10

レジ袋有料義務化で

減ったのはゴミじゃない、自由だ

ということで、今日はこちらのツイートから。


ちょっと前にツイートした

レジ袋有料義務化と独占禁止法

について、書いてみようと思います。
まず独占禁止法についておさらいしましょう。
 
独占禁止法とは

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

のことです。
この法律は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に経済活動できるようにすることを目的としています。
自由な経済活動が出来れば、事業者は自らの創意工夫でより安くより良い商品を作りだし、それにより利益に繋げることができます。
また自由な経済活動による企業間競争によって、私たち消費者は自分のニーズに合った商品を選択することが出来、結果豊かで便利で快適な生活を送れるようになります。
そのために独禁法では、一事業者が、他の事業者を経済活動から排除したり支配したりすることを禁じ(私的独占行為)、また業界団体の事業者同士が互いに結託し、商品の価格や生産数量などを共同で取り決め、企業間競争を機能させなくすることを禁止しています。(カルテルによる不当な取引制限)

さて、昨年7月から施行された「レジ袋有料義務化」ですが、上記ツイートにもあるように2007年の時点では

レジ袋の一律有料義務化は独占禁止法違反

であると公正取引委員会により見解が出されています。
当時の報道記事をご覧ください。


新潟県佐渡市において、レジ袋を一律5円に有料化しようとしたところ、公取委より

「一律価格は不当な取引制限に当たり、カルテル行為を禁じた独禁法に触れる」

「値段は各者が自由に決めるもの。目的は別にして、強制したり、離脱が困難だったりする価格設定には問題がある」

として指導が入ったのです。
公取委の見解はもっともだと思うのですが、ところが一転、その後公取委は

レジ袋5円と一律有料化することは独占禁止法上問題となるものではない

と見解を180度転換してしまいます。


独禁法に当たらないとする理由を要約しますと

●レジ袋は商品ではなく副次的なサービス
●業者間競争はレジ袋ではなく商品取引で起こっている
●よってレジ袋有料義務化では小売事業者間での競争は制限されない
●消費者にとってレジ袋は商品購入に当たり必要不可欠なものえはなく、また消費者はレジ袋を目的として来店していない
●レジ袋削減は社会的理解が進展しており、正当な目的に基づく取組

といった内容です。
もっともらしいように聞こえますが、しかし現実は違います。
それを知るために、レジ袋有料義務化に至る流れを見てみましょう。

レジ袋有料義務化の出発点はバブル経済で日本中が元気だった昭和末期まで遡ります。
1988年以降、一般家庭ごみの量が激増し、最終処分場がひっ迫したことから「ゴミの量を減らそう」という課題が持ち上がってきたのです。
そこで生産者責任の考え方に基づき、容器包装の製造を行う事業者に再商品化の義務を負わせ、リサイクルを進めることを内容とした「容器包装リサイクル法」が平成7年に制定されました。
その後、容リ法制定から10年の平成16年に中央環境審議会などで容リ法の検証が行われました。
検証の結果、リサイクル率は上がったものの、家庭からのごみ排出量や容器包装廃棄物の割合に変化が見られなかったことから、平成12年の循環型社会形成推進基本法において、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の順で優先的に取組を進めることとなり、容器包装廃棄物の排出抑制が進められることとなりました。
これを受けて、平成18年に「容器包装リサイクル法」が改正されることになります。

その時に上がったのがレジ袋有料化です。

平成18年の容リ法改正をめぐる審議会では、レジ袋無料配布禁止などが議論されましたが、結果的には以前も記事に書いたように「レジ袋有料義務化は憲法違反の恐れがある」として明文化は見送られることになります。

しかし、レジ袋有料義務化が明文化されなかった理由はそれだけではありません。
大手スーパーマーケットが加盟する日本チェーンストア協会は一貫してレジ袋有料義務化の法制化を求めたのに対し、コンビニなどが加盟する日本フランチャイズチェーン協会が反対したことも大きな理由のひとつです。

ではなぜ、大手スーパーマーケットが加盟する日本チェーンストア協会は一貫してレジ袋有料義務化の法制化を求めたのでしょう?
それは

レジ袋を法律で有料義務化してくれないとレジ袋無料の店舗に顧客が流れてしまうおそれがある

という理由からです。

レジ袋有料義務化と独禁法5
レジ袋有料義務化と独禁法7

では話を元に戻しましょう。
公取委はレジ袋有料義務化が独禁法にあたらない理由として

●業者間競争はレジ袋ではなく商品取引で起こっている
●よってレジ袋有料義務化では小売事業者間での競争は制限されない
●消費者にとってレジ袋は商品購入に当たり必要不可欠なものえはなく、また消費者はレジ袋を目的として来店していない

としています。
しかしそれが間違いであることは、日本チェーンストア協会の

レジ袋を法律で有料義務化してくれないとレジ袋無料の店舗に顧客が流れてしまうおそれがある

という賛成理由が証明しています。
これは言い方を変えれば

レジ袋配布の自由は公正かつ自由な競争

であるということで、公取委は誤った判断をしていると言えます。


さて、最後にもうひとつだけ触れておきたい事実があります。
公取委はレジ袋有料義務化が独禁法にあたらない理由として

●レジ袋削減は社会的理解が進展しており、正当な目的に基づく取組

ということも挙げています。
前述したようにレジ袋有料義務化は、元々は一般家庭ごみの量を減らすことを目的にしています。
そこでこの表をご覧ください。

レジ袋有料義務化と独禁法8

こちらは環境省が公表している「一般廃棄物処理実態調査結果」から集計された「1人1日当たりのごみ排出量都道府県ランキング」です。
9位の富山県に注目していただきたいのですが、2003年に比べ2013年度の1人1日当たりのごみ排出量は増加しており、その増加量は全国2位です。

レジ袋有料義務化と独禁法9
※増加量で並び替え

なぜ富山県に注目しているかというと、富山県は2008年に全国に先駆け全県的にレジ袋有料義務化を始めた県だからです。

富山県では、レジ袋が有料義務化される前の2003年より導入5年後の2013年の方が一般家庭ごみが増えた

これが事実です。
これで

減ったのはゴミじゃない、自由だ

の意味がわかっていただけたと思います。
そしてこの自由は私たち一人ひとりが不断の努力によって守るべきものなのです。


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